ジェイミーリン
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アメリカ・ワシントン州のシアトルを玄関口とするマウントベイカーは、豪雪エリアであること、そして、オウンリスクながらもバックカントリーアクセスが認められていることから、フリーライディングの聖地とされている。プロからキッズまで、あらゆるスノーボーダーに広く門戸が開かれているバンクドスラロームは、ローカルイベントながら世界中のプロスノーボーダーも参加をするほど認知度が高く、テリエ・ハーカンセンは全盛期にあった当時でさえ、できるかぎり参加するようにしていたほどだ。理由のひとつは、開催地がベイカーであり、また運営スタッフがベイカーのローカルであることだ。世界屈指のフリーライド天国を愛する滑り手による滑り手のためのイベント、それがバンクドスラロームなのである。
時に世界の中心となる風土を持つベイカーだけに、ローカルたちの顔ぶれには一流の姿も多い。ジェフ・フルトン、ダン・ドネリー、クレイグ・ケリー、マットとテンプルのカミンズ兄弟、マイク・ランケット、そして、ジェイミー・リンもかの地を語るうえで忘れてはならない重要なスノーボーダーだ。
ジェイミーのベイカーでの滑りは、90年代前半のFALL LINE FILMS制作の映像作品などで数多くみることができる。SESSIONSのウエアに身を包み、LIB TECHを駆る姿に熱狂したのは日本だけではなく、ジェイミーは世界を魅了した。そうした背景には、滑りが雄弁である一方、素顔やプライベートについて語る言葉が少なかったことが考えられる。口数の少ない寡黙なキャラという印象ながらも、顔を見なくても誰なのかが即答できるほど個性あふれる滑りを披露していたのだ。
ゴーグルもグローブも必要としない出で立ちで雪上に立ち、幅広のスタンスに、腰を落とした姿勢でテイクオフをし、軽やかにトゥイークやスピントリックを見せてはストンプしていく。誰とも違うスタイルで表し、それでいて上手いのだから存在感は強烈だ。おまけに、映画『スタンドバイミー』時代のリバー・フェニックスに似ているほどルックスもいい。まるでアイドルのように、雪上から離れてもファンの視線が追いかけてきた状況にも理解ができるというものである。
あまりに注目を集めたからか、全盛期には前述した映像をのぞいてメディアに登場することは少なかった。今とは違い、ネット環境が一般的でない時代だ。絶対的な情報量が少なく、そのためにファンは常にジェイミーに飢え、知りたい欲求は強まり続けた。
しかし、ジェイミーは姿を現さない。2001年にシアトルへ取材で訪れた際も、アテンドしてくれたマイク・ランケットが帰国直前までコンタクトをしてくれたが、最後まで登場することはなかった。が、完全にトップシーンから退いた2008年、トラビス・ライスが主催したワイオミング州ジャクソンホールでのNATURAL SELECTIONではジャッジとして会場を訪れ、ウェルカムパーティーではギターを片手にライブまで披露した。近年では来日してイベントに姿を見せることも増加。カリスマとしての緊張感から解放されたのか、それとも単に年齢を重ねて大人になったのか。確かな理由は不明だが、かつてのような姿の見えないビッグネームではなくなったようである。
最後に、誰とも違うという点で、ジェイミーはスノーボーダーとしてのライフスタイルを見せてくれたことに触れておきたい。シアトルという、グランジロックを生み出したカルチャーシティで育ったことが大きいのだろう。彼の生活はスノーボードだけで構成されていなかった。雪がよければ滑り、よくない時にはスケートをし、アートを描き、ギターを弾いて、バイクやヴィンテージカーにも興味を示した。山の奥深くにアプローチして良質な雪だけを求めて生活するのではなく、都会だからこそ味わえるカルチャーも愛した。それがジェイミー・リンという人なのである。
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サトもジェイミーの滑りに憧れてリブテックの板を買おうと思った。
実際には買うことがなかったが、今でも最初にジェイミーを見たインパクトは忘れられないです。
今日はこの辺で。

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